b8597_292これは昭和10年の国語の教科書です。

タイトルは「手紙」です。
小学校5年生の教材で,この作品だけが「候文」になっています。ですので,当時,手紙をきちんと書くときには候文を使って書くことが良い書き方として指導されていたのです。
その後,候文は教科書から消えていくので,この時代は,きっと文章風が変わりつつあった頃なのだろうと思えます。

その手紙も,最近はめっきり書かなくなりました。
ハガキも希になりました。
そんな時代なのですが,手紙の書き方をきちんと指導されている先生もいます。
「拝啓」で始まり,「敬具」で終わる。
これを指導するだけでも,今の時代はなかなかのものです。

先日,手紙の指導をきちんと受けているクラスの子から,お手紙を戴きました。ですので,その返事は型どおりに「拝復」と書き始めました。「拝復」と書くことによって,「拝啓←→拝復」という対応を子どもに伝えられるからです。
もちろん,大切なことは,「つつしんで・・・」という相手への敬意です。「拝啓」と書いてあっても,言われたから書いているというのは,いただけません。しかしながら,拝啓など定型化した言葉は,それを何度も使うことで,その感覚が体にしみてきます。
そんな思いがあるので,まずは,子どもが知ること。そのために,子どもに知らせることです。

本文を書き終えたら,最後の一筆を入れるのですが,「拝復」の対は何なのか。これを知っている先生もごくごく少数になりました。
対は複数あるのですが,昭和10年の教科書が教えたのは「拝具」です。

「拝復」「拝具」。
これも,日本人の作り出した美しい手紙様式です。
最近,日本の良さや,日本人の良さを真剣に追求し,少しずつ子ども達に伝えている先生が増えています。
そういう先生の豆知識の一つになればと思います。