【横山験也のちょっと一休み】№.2825

16.8
この数を「十六点八」と読むことは、皆さんご存知のことです。
また、「.」のことを「小数点」と呼んでいます。

この小数点ですが、戦前の算数の本を読んだら別名が載っていました。

小数点ノコトヲ,昔シハ「奇零」トモ言ツタガ之レハ日本数学ノ昔シカラノ言葉デアル。(『覚え易い算術の講義』根津千治著 萩原星文館 p10)

小数点のことを「奇零」と呼んでいたとありますが、戦後生まれの私は、「奇零」という言葉を知りませんでした。

少々気になったので、辞書で調べてみました。
日本国語大辞典に「単位以下の数。小数点以下の数。はした。」と載っています。
どうも、意味が違うようです。

漢和辞典の字通で「奇」を調べたら、熟語として「奇零」が載っていました。
そこには、「不整数」と出ています。
「整数にあらず」ですから、順当なところで小数をさしていると分かります。
これも、算術の本の説明と食い違っています。

こう言う時、どう考えたらよいかと思うのですが、国語辞典には一般的な言葉の解説が載っているので、通常は小数点以下の数を指しているが、算術では小数点の意味でも用いられていたととらえるのが基本だろうと思います。
しかしながら、算術の本の方が書き間違えたのではないかとも思えてきます。
「小数ノコトヲ」と書くべきところを、「小数点ノコトヲ」を書いてしまったのかもしれません。

そこで、戦前の辞書で調べてみることにしました。
昭和十年の新修百科辞典(三省堂)に素晴らしい説明が載っていました。

和算で単位以下の数。

「奇零」は和算の用語とわかり、それならば、確実に小数点はありません。
小数点は洋算と一緒に輸入された記号だからです。

ということで、算術の本の記述ミスと思えます。
が、そうとは言い切れないのが言葉の世界です。
和算の用語としてあった「奇零」を、新しく入ってきた小数点にも学校現場で転用していた可能性も排除できないからです。
ハッキリわかるまでには、もう少し時間がかかりそうです。

この本には、「奇零」は出てきません。

その代わりというわけではありませんが、「小数点君」が載っています。

初めての小数の学習の時、その場で、ちょこちょこっと「小数点君」を作っておくと、授業が愉快になります。

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不整数。(字通)