【横山験也のちょっと一休み】№.2739

■ お気に入りの算数:11から19の和語 ■

 1から10までの数を普通は、「イチ、ニ、サン・・・」と言います。それとは別に、「ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」という言い方もあります。

 前者は中国から伝わった漢語の読み方で、後者はもともと日本人が使っていた和語の読み方です。

 日本人に懐かしさや望郷の念を感じさせるのは、「ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」の和語の方なのですが、意外なことに「とお」の先が言えません。「11」のことを和語で何と呼ぶのでしょう。
漢語で「11」は「ジュウイチ」ですから、「十」と「一」を続けて言えばよいわけです。これは10進法から考えてみると、たいへん理にかなっています。

 漢語で「ジュウイチ」なのですから、和語も「とおひとつ」なのかなと思いますが、これがそうはなりません。

江戸時代、東海道には15の国がありました。それを子供達に教える本が手元にあります。明治5年刊行の『童蒙必読 州名巻』です。

 そこには、「十五国」と書いて、「とおあまり いつくに」とルビが振ってあります。

 また、東山道には13の国があり、「十三国」(とおあまり みくに)とルビが打たれています。

 十五国 = とおあまり いつくに

 十三国 = とおあまり みくに

「とお」の後に「あまり」と付けてから一の位の数を言います。10だけではなく、まだその下の細かい数がありますよと宣言をしているように思えます。聴く人に親切な言い回しです。

 そう思うと、日本人の親切心は大昔から続いているのだと感じられてきます。

 明治初期ごろまでは、市販の本にも載っていた11以上の和語の読み方が、今ではすっかり使われなくなり、知っている人もほとんどいなくなりました。ちょっと残念な気もします。


関連記事: