昭和2年に出た『尋常小学 新算術書解説』に左の図が載っています。
  その解説には,次のように書かれています。

  本問に入るに先立って,次の様な表に依って,乗算九々の復習をする。 

  今風に言えば,百ます計算で復習をしてから本問に入りましょう,と言っているのです。

  九九表の中身を空にして,九九の練習教材に作り上げています。この「教材工夫」に敬服します。
  すべてが埋め尽くされている九九表をみて,そのまま何も気がつかないか,それを練習教材になるように工夫するか,ここが先生の才覚です。昔の先生方も,工夫に工夫を重ねていたことが,この表からうかがい知ることが出来ます。

  解説は,もう少し続きます。

  此の表に依って視暗算として,自由に発表し得る様に指導をしたり,此の表を示して,此の表を,乗算九々の表に作成させる事もよい。

  「視暗算」という用語も出ています。グッドです。「視暗算」と用語を読めば,もしかしたら,「聴暗算」もあるのかなと思います。用語は用語を見ることで,指導の幅が広がることがあります。
  「指暗算」もあるのかな,「歩行暗算」もあっても良いな,「眼つむり暗算」もいいかもと,ちょっと意表を突く感じで思いを巡らせるのも楽しいです。

  

  

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  『子どもが夢中で手を挙げる算数の授業』(さくら社)の2年1巻に,百ます計算関係のソフトも収録されています。
  九九表全体での計算練習は,2年1巻の「かけ算九九」の単元に収録されています。
  36ますになっているタイプは,2年1巻の「九九のきまりと九九表」の単元に収録されています。