b8053教科書に出てくる直径の定義を見て,--「中心を通り,円のまわりからまわりまでひいた直線を,直径といいます。」(東京書籍)--それなら,これも直径だよねと,右のような図を示した先生がいました。
さて,赤い線は直径と言っていいのでしょうか。

こういった提示を時々話してくれたのは,有田和正先生でした。
でも,私の場合,有田先生から話を聞く前に,東京の某先生からも聞いたことがありました。
その時には,「そんなことを子供達に話したら,いらぬ混乱を招くだけ」と思っていました。

その後,有田先生が同じようなことを話してくれたので,少し眉間にしわがよりました。
ところが,有田先生は「直径の定義に,面積を半分にする」というのがあると話してくれました。
そんな定義があるのかと首をかしげましたが,それ以上に重要なことに気がつきました。
それは,「子供達にとって有益か」ということです。

「直径は面積を半分にする」という性質を子供達が知ることは,これは大いに役立ちます。
「面積」は4年から学ぶので,3年生には「広さ」と言うようになると思いますが,言葉として教えてしまうのは良いことです。
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一昨日,この妙な直径の画像をアップしたら,有田ファンの北海道の福嶋先生が「子どもたちと一緒に何種類もの国語辞典を調べて比較検討したことがあります。」と教えてくれました。
これ,良いですよね。

国語辞典を引くと,面白いことが出ています。
大人用と子供用から1つずつ引用します。
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『広辞苑』(岩波書店)(diameter)円または球の中心を通って円周または球面上に両端をもつ線分。また、その長さ。さしわたし。
『例解学習国語辞典』(小学館)円,または球の中心を通り,円周や球面上の二点をむすんだ直線。また,その長さ。さしわたし。
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広辞苑は「線分」と用い,小学生向け国語辞典は「直線」と用いています。
この違いが生じるのは,「線分」は中学生になってから学ぶ用語だからです。
ですから,小学生向け辞書では意味を説明する用語として使えません。
代用として「直線」を用いています。

では,「線分」とは何でしょうか。
永遠に続いている直線をどこか2点で切り取った残りです。
「ここからここまで」となっている直線です。
ですので,線分と言った場合,図に示したような折れた形は線分にはなりません。
線分が2つとなります。定義には,「2つの線分」などと書く必要が出てきます。

中学で習う「線分」という用語を小学生が習っていたとしたら,「線分なんだから,基本的に直径とは言えません!」とハッキリ言われてしまいます。

漢和辞典で調べると,もう少し違う世界が見えてきます。
直径の「径」を『字通』(平凡社)で調べてみました。
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[1] みち、こみち、ちかみち、あぜみち。
[2] 獣みち。
[3] すぐ、ただちに、すみやか、たやすい。
[4] わたる、すぎる、おもむく。
[5] さしわたし、直径。
[6] 頸(けい)と通じ、くびすじ。
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「径」という漢字には,なんとなく「小道」という印象を持っています。
ですが,それとは別に,「近道」という意味も持っています。
すると,図の赤い線は,遠回りをしていることになります。
ということで,「近道じゃないんだから,赤い線は直径じゃないよ」という声が出てきたら,これはすごい!となります。
じゃあ,円周と円周を結んだ直線を引いたら,それは何なのかというと,それを普通「弦」と呼んでいます。
ここから,「弦」の一番長いものが「直径」とわかり,直径は弦の特別な形とわかります。
すると,直径は弦の仲間となり,半径を組み合わせた形では無いとわかります。
半径は何かの「半分」という意味ですから,半径は直径に従属しています。
赤い線の考え方は,従属関係を逆にして,直径を半径に従属させているようにも見えてきます。

こんな風にあれこれ思っているとき,頭の中に野口先生を登場させてみると,趣のちがう世界が出てきます。
考えられるのは「直線」という言葉にこだわることです。
直線は,線の仲間です。
わざわざ「直」と書いている「線」です。
ということは,「直」でない「線」もあると言うことです。
「曲線」
「折れ線」
これが見つかれば,次のように筋を通すことができます。
図のような折れている図形も直径と認めるならば,定義に「折れ線」と書くべきだ。
でも,それを書いていないのは,該当していないということなのです。

1,面積を半分にする。
2,線分という言葉がある。
3.弦という言葉がある。
4,線は直線・曲線などの総称である。

こういうことが次々出てくるので,有田和正先生の話してくれていた直径の問題は秀逸なのです。
有田和正先生の『今こそ社会科の力をつける授業を』--
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