b8603_300ネットで見つけて,妙に惹かれて購入した『百姓伝記(上)』です。
江戸時代の静岡界隈のお百姓さんが書き記した,「農家の専門書」です。
まだ,途中までしか読んでいないのですが,あれこれ納得しています。

例えば,トイレはどこに作るべきか。
農家なら,ここでしょう!というのが載っています。

昔の農家ですから,トイレは母屋から離れているところにあります。
武家屋敷のように母屋の中にトイレはありません。
身分の違いで・・・と,当て推量をしていましたが,これがまったく違っていました。

農家のトイレのベストの位置は,母屋の南東です。
北側ではなく,南東です。
どうしてでしょう。その理由は,はやく腐るからです。

腐らせて良い肥料とするために,日当たりの良いところにトイレを作っていたのです。
当然,木陰や風通しの良いところはダメです。
もちろん,武家屋敷のように,母屋と同じ所にトイレを作ったら,それは農家にとっては商売あがったりになります。

お風呂のことも載っていました。
家に風呂があることは農家としては贅沢だったようです。
お風呂がないと,体を洗う場所が定まらず,水が無駄になります。
そこで,大切なこととして,定まった場所で体を洗うようすすめています。
その場所には穴を掘り,竹のすのこをしいておきます。その上で,体を洗います。
すると,汚れた水が穴にたまるので,それを肥やしを薄めるときの水として使うのだそうです。
無駄がないように,こう工夫するんですと記されています。
今の時代,同じ事はできませんが,学ぶところが多いです。

驚いたのは,道で他国の人とすれ違うときの行儀作法まで記されていることです。
他国の人と往来ですれ違うときには,脇へ寄るのがよく,
また,道の良い方を相手が通るように譲るのがよいと記されています。
このように礼を示せば,他国の人でも無礼なことはしないのです。

これが1680年代頃の日本の農家の方々の礼儀作法なのだと感心させられました。
まだ読み終わっていなので,この先も楽しみながら読みたいと思っています。