お椀やお茶碗の持ち方で,時々目にするのが,左のような持ち方です。
この持ち方でも食事はできます。
でも,あまり好ましい食べ方とは思われていません。どちらかというと,悪い持ち方とされています。
人差し指で引っかけているところに,どうにも違和感が出るからです。
お茶碗の悪い持ち方といえば,下の2つが代表格となります。
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(1) 掌にお茶碗を載せるやり方
(2) 上の図のように,人差し指でひっかけるやり方
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この2つは,「持ち方」が悪いのです。
お茶碗は「持つ物」です。
手で小さな物を持つときには,右の図のように,指で持ち,掌は乗せる所となります。ですので,1の掌にお茶碗を載せて食べるのは,どうにも不作法と映ります。
2は指を使っているので,確かに持っているのですが,お茶碗の持ち方の基本「4指をそろえ,親指で支える」に外れているのです。
1も2も,ちょっとした違いです。
ですが,そのちょっとした違いを行儀作法としてきたのが日本人なのです。
ところで,上の2つより,もっと悪い食べ方があります。
それは,お茶碗を置いたままで食べる「犬食い」です。
お茶碗を持つこともしないのですから,問題外です。
置いたままが「犬食い」なら,上の持ち方は「ネコがけ」です。ネコが前足をお皿に引っかける様子に似ているからです。
「人をして礼あるをもって,
自ら禽獣より別つことを知らしむ」(礼記)
「禽獣」の「禽」はニワトリ。「獣」はけもの。
礼儀や行儀作法を学ぶことで,禽獣とは違うことを知り,より人間らしくなるのです。
2000年以上も昔に言われた言葉です。
このような礼儀作法を日常的にも高度に発展させてきたのが,私たち日本人です。
これは,誇るべき生活文化です。