【横山験也のちょっと一休み】№.3535

2年生の算数と言えば、かけ算九九ですね。
全員の子が九九を確実に言えるようになれば、万々歳です。

小学校では2の段~5の段をまず学習し、その後、6の段~9の段の学習をします。
2~5の段は結構すんなり進むのですが、6~9の段になると、「うろ覚え」が増えてきます。「しちシは、いくつだったけなぁ」とピンとこない九九が増えてきます。

こんな時、熱心な先生はリズムに乗った九九の歌をみんなで歌ったり、「今日は、8の段の確認をしますよ」と言って、一人一人の8の段の暗唱具合をチェックしたりと、知恵を出して取り組みます。

また、算数の専門書を読んでいる先生は、「かけ算の意味を伝えることが大事」と知っているので、授業中に、「7×8」の計算をする場面があったら、「7×8は、7が8こだね。だから、ひとつ前の7×7の答えに7を足して答えを出してもいいね」などと、かけ算の仕組みについて少し触れるように授業を進めていきます。

若い頃に読んだ算数の専門書に、意味を伝える効能が出ていました。
2年生で九九を覚えた子が、春休みを終えて3年生になったら、結構忘れていることがあります。
そこで、専門書の著者先生たちの研究グループが暗記中心で教えたクラスと、意味を伝え続けたクラスで、春休み明けの子ども達にどんな違いがあるか調べたのです。
そうしたら、暗記一筋の方は忘れている子が多く、意味のクラスは忘れている子が少なく、忘れていてもすぐに問題なくなったそうです。

単純暗記も大切ですが、意味を伝えることは忘れにくいという効果があります。

暗記と意味だけでも、結構充実した授業になるのですが、さらにもう一つ、「自分で問題を解決する子に育てているクラス」では、かけ算の後半になると、子ども達に九九表をくばり、分からなくなったら九九表を見て答えを見つけるように促します。そうして、分からなくなって調べた九九のマスに、鉛筆で小さく「●」と書き込む作業をさせます。
よく覚えられていない子は、自然と「●」が多くなっていきます。それだけ、回数多く九九表を目にするわけですから、知らず知らずに、九九を俯瞰する力がついてきます。中には、何かしらの気づきを持つ子も出てきます。「2の段の横一列と、×2の縦一列が同じ数の配列になっている」とか、「左へ1つ進むと、段の数だけ数が大きくなっている」とか、「同じ答えが結構ある」とか・・・。

こうした九九の教養を広げる力が九九表にあります。その九九表の名人になっていくのが、「●」をつける数が多い子、つまりよく覚えていない子となります。ですので、九九の学習で九九表を小道具として子どもに渡す先生は、かなり立派な先生となります。

下の3冊は私の書いた算数の本です。小学校の先生が算数の授業を楽しくしていくためのアイディア集です。なかなか面白いですよ。