【横山験也のちょっと一休み】№.3758
石巻で山中伸之先生の「道徳を教える前に教師がすべきこと」のお話が印象深かったです。
山中先生はまた一段、奥深い存在になったと感じました。
事例として進化心理学の本にも出てくる「トロッコのジレンマ」「歩道橋のジレンマ」が紹介されました。
止められないトロッコがそのまま進むと、その先で作業している5人と衝突して、5人とも死んでしまう。
しかし、目の前に切り替えのレバーがあり、それで線路を切り替えると、その先には1人の作業員がいてその1人が衝突して死ぬ。
さて、あなたはレバーを切り替えるか、そのままにするか。
次に出て来たのは、レバーは無く、代わりに歩道橋があり、その歩道橋に自分ともう一人がいる。そのもう一人を突き落とすと、とこっろはその人とぶつかり止まる。結果として死亡1名。5名は助かる。
さて、あなたは突き落とすか。
この問いは、私の読んできた本にも出てきており、改めて読み返してみると、意思決定がどう行われるか、その理由を見つけるための問いとなっています。
ですので、この問いには正解があるわけではありません。自分がこっちだろうとと思うことに決めればいいのです。
ですが、これまで野口芳宏先生の話を20年以上も濃いめに聞いてきました。その中で何度も繰り返されてきたのが、「教師は解を持っていなければならない」です。
すると、何らかの理由を持って解を示すのが筋と思えるのですが、そこを山中先生はグッとこらえて、自らの判断は話しませんでした。
私にとっての驚きはそこにありました。
今回の事例は、有田和正先生が唱えていた追究の鬼の学習の中の一つの形として示されていた「オープンエンド」のように感じました。
有田先生も言っていましたが、オープンエンドにすると、授業を受けた人の中に思考が続くのです。まさに、それを山中先生のお話から実感しました。
道徳の授業をする前の心構え、修養の大切さを話す材料として、この形は何とも言えない味があります。また、一段、山中先生は奥深い存在になったと感じました。
それともう一つ。人間って、良いものだと講座中に思いました。
この問いへの解を近くの人と話し合う時間がありました。聞いてみると、どっちかに答えることより、他の方法があるんじゃないかとの声があがっていました。
私もそう感じていたので、改めて「人は人を助けたくなる」そういう存在であることを確認した思いでした。類として人間が発展してきているのは、この人を助けたくなる心を持っているからです。人間は良いものだと思った次第です。
山中先生とは何十年ものお付き合いがありますが、大躍進をしている友です。次の講座をどこで聞くことになるのかわかりませんが、楽しみです。
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山中伸之先生の本です。山中先生は、子どもからの発言を受け止める名人です!!