【横山験也のちょっと一休み】№.2848

戦前の算術書に載っていた「奇零」。
見たことも、聞いたことも無い用語でした。
その本には「小数点」という意味として紹介されていましたが、調べたら「端数」という意味合いが元としてあり、小数点の呼び名としても使われていたことが分かりました。

この「奇零」から始まった好奇心から、『本朝度量権衡攷1』『本朝度量権衡攷2』の購入へと進みました。
すると、この本に、新たに見たことのない用語「有奇」などが出ていて、「これは面白い!」と一人で感激しています。

今回は、その中から、「不尽」をご紹介します。
不尽を使った表現が『本朝度量権衡攷1』にたくさん出てきます。
その1例をご紹介します。

六百九十四寸四百四十四分不尽

もう、おわかりと思いますが、今風に書くと左のようになります。
同じ数がずっと続くときに、「不尽」と使っていました。

尽は「つきる」ですから、不尽は「尽きない」です。
広辞苑にも、「つきないこと」と載っています。

六百九十四寸四百四十四分不尽は、四分の後に「尽きることなく四が続く」という意味です。

「不尽」を戦前の国語辞典『小辞林』で引くと、
「① つきざること ② わりきれざること」と載っています。

不尽のつく数学用語に「不尽数」というのがあり、これは「無理数」として今は使われています。

明治に入り西洋の数学が入ってきました。
それを受け入れるだけの能力がすでに日本人にはあったことも嬉しいことですし、使われなくなった言葉が出る程に、言葉や概念が発達していたことも、さすが日本人と思います。

私が書いた愉快な算数の授業用の本です。
この本に出てくるネコも可愛いです。

関連記事: