江戸時代の儒学者,伊藤仁斎先生の『童子問』

孔孟に正宗(せいそう)を得(う)ること無し。高からざれば即ち楽しまず,奇ならざれば即ち悦ばず,常(じょう)を厭(いと)うて新を喜び,近きをすてて遠きを取る。予深く悲しむ。

これが一貫している本です。
野口芳宏先生が「根本 本質 原点」と仰います。 まったく,その道です。
こういう考え方をしていると,「仁者は俗を嫉(にく)むの心少し」「不仁者は世を憤るの心勝つ」といった見方にも納得するものがあります。

この本からの最大の学びは「内外一致」論です。
仁斎先生の内外一致論は実に優れています。
仁斎先生の論により,私は作法の教えを輪切りにした様子を明示できるようになりました。しかも,作法の効用を非常にわかりやすく説明できるようになりました。学んで良かったです。

何かを習得することの説明には,2つの視点が必要です。
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1つは流れ(時)の視点
1つは輪切り(場)の視点
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仁斎先生の内外一致論は,作法をこの「輪切り」から実に明快に説明できるのです。

作法書はたくさん世に出ています。しかしながら,「何をどうする」のハウツーの域から出る書がほとんどありません。
そんな中,戦前の相島亀三郎先生や下田歌子先生の本が奮闘してくれているので,私もその道を拓いていきたいと思っています。
作法の根本・本質・原点は何なのかを,先達の水準を超えて語り記せるように,前進していきたいと思っています。