【横山験也のちょっと一休み】№.3478

遠足があると、たいていは2列になって、並んで目的地に向かいます。
先生は子供たちの安全を保ちながら歩くのですが、列の最後尾の子にも、「後ろから車が来たら、声を出しね」などと、安全確保に一役買ってもらうものです。より安全性が高まることと、最後尾の子に、「みんなを守る」という温かい心を持ってもらいたいと願うからです。

列の最後尾や後ろの方のことを、「しんがり」と言います。時代劇などで、戦に敗れた軍が敗走するとき、この「しんがり」を担当する武将は、非常に優秀な武将が担いました。追いかけてくる敵兵と戦いながらの敗走ですから、時にはしんがり部隊が全滅することもあります。それでも、率先して担おうとする精神力や武勇のある武将がしんがりを務めるわけです。

この「しんがり」に漢字があるのをご存じでしょうか。それが「殿」なのです。

殿と言えば、集団の頭と感じますが、尾も殿なのです。
白川静の「字通」を見ると、そこに「臀と通じ」とあります。「臀(でん)」は臀部、つまりお尻のことです。そこから「でん」つながりで、「しんがり」という言葉に、漢字の「殿」を宛てたのでしょうね。

「しんがり」を漢字で「殿」と書くことが分かると、遠足のしんがりに位置する子に、「殿」の話をすることができます。優秀な武将という意味も伝えられるだけでなく、殿様のようにみんなを守る心を持つことになりますねと話すこともできます。
さらに、字通には古い辞書の意味として「オクレヌ」と出ています。殿様気分で油断しないでねと、漢字を通し話せますね。
「殿」はなかなか奥深いです。

さくら社から新しく本が2冊出ます。
どちらも3月25日の発売です。
とても楽しみな本です。


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