宇都宮で開催された野口塾に行ってきました。
一つ一つのお話しが,強烈です。
例えば,野口先生のお話のスタートに,下の言葉が出ました。
◎教育はそのままにしておかないこと。
なるほどと思います。良い言葉です。
頭に響く言葉です。
野口先生の凄いのは,そこから,心に響かす言葉続くことです。
◎ そのままにしておかないのは,有望だから。
ああ,納得!
こういう哲学的な学びがとても多いので,実に,ありがたいと思います。
また,今回も,野口先生が会場でもひたすら勉強を続けていました。
この姿にこそ,もっとも多くのことを学んでいます。
野口先生からの学びがほとんどの野口塾ですが,最近は山中伸之先生の素材研究が凄いです。
今回は,「ごんぎつね」の4でした。
松虫のチンチロリンと鳴く場面,とても良い素材研究の話しを聞けました。
ゴンがどんな様子でじっとしていたかは,虫が鳴きやんでいない様子から,息を殺すほどと分かってきます。
なるほどと,唸りました。
山中先生の素材研究には,この先,ちょっと注目していきたいです。
私もちょっと,素材研究をしてみました。
「月のいいばんでした」
これは,月の姿が良いのではありません。月の光がこうこうと差して,当たりが明るくなっている様子を表しています。
ですので,満月か満月に近い月です。
ということは,一月(ひとつき)の中程の日の晩と言うことになります。もちろん,「ごんぎつね」が江戸時代のお話しだったらのことですが。
江戸時代は太陰暦なので,1日(ついたち)は必ず新月の日となっています。新しい月が始まるので,新月なのです。
ですので,日食が起きるのは太陰暦では,常に1日(ついたち)となります。
ということで,松虫が鳴いている月半ばですから,ちょうど中秋の名月あたりの晴れた夜のお話しと考えられます。
「チンチロリンと,松虫が鳴いています」
「チンチロリン」は,唱歌「虫の声」に出てくる松虫の鳴き声です。「虫の声」が出来たのは,1910年(明治43年)。小学唱歌として誕生していますから,この年から全国小学校で歌われたことになります。新美南吉が生まれたのが1913年(大正2年)ですから,きっと南吉は小学校でこの歌を何度も何度も口ずさんでいます。それがその「ごんぎつね」の一こまに登場しているように思えます。
「ごんぎつね」は江戸時代の話しのようですが,作者の位置する大正・昭和時代が顔を出していて,こういうところは,面白いなぁと思います。
素材研究というのは,教えることを考えずに,一人の人間として考え調べていく作業です。ここが分厚くなると,授業で子ども達から出てくるいろいろな意見や感想をしっかり受け止め,そこからちょっと深い世界へと案内することが出来ます。「受けの授業」が出来るのです。
--
道中,読んでいたのは『西遊草』(清河八郎)です。
お茶の葉を選び取る女の子が,時々,手を口に付けていたので,それを「まずきありさま」と書いていました。
でも,上品の茶には羽を使って選び,手を使わないので,「さもありなん」と一言書いていました。
こういう一こまは,良い勉強になります。少し遠いのですが,祝儀袋の水引の一方が赤くなっている話しに通じています。