【横山験也のちょっと一休み】№.2717

■ 趣味のルビ「東海道」 ■

昔の本を読んでいると、ときたまルビの振ってある本と出合います。
本文の面白さとは別に、漢字の脇に書いてあるルビがなかなか面白く、感心したり笑ったりしています。

先日、中学校の社会の先生と歓談する機会がありました。
来年度にはジャワ島のジャカルタの日本人学校で教鞭をとるそうです。
海外の話などもあり、私が勝手に盛り上がり、ルビの話をしました。
すると、社会科の先生だからか、ちょっと強い反応がありました。

珍しいルビに面白さを感じる人が、私以外にもいることがわかると、嬉しくなります。
そこで、1つブログで紹介することにしました。

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東海道
ひむがしの うみつ みち
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出典は明治5年の『童蒙必読 州名巻』です。

東海道は「とうかいどう」と読むだけで、他の読みがあるとはゆめゆめ思っていませんでした。
ですので、このルビには感動しました。

また、その昔、東を「ひんがし」と言っていたことは知っていましたので、「ひむがし」は特に大きな驚きはありませんでしたが、その言葉が明治初期にも使われていたことに、大変驚きました。

東の言い方がいつ頃どう変わったのか、ちょっと気になり、調べてみたら、愛用しているジャパンナレッジの『全文全訳古語辞典』に載っていました。
「東」の語源として、次のように記されています。
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語源は「日向(む)かし」で、日の出る方から吹く風の意から、東方の意になる。「し」は西(にし)の「し」と同じく、もとは風の意。上代には「ひむかし」、平安時代に「ひむがし」の形で用い、中世以後「ひがし」になる。ただし、『平家物語』では「ひんがし」と読んでいる。   『全文全訳古語辞典』(小学館)より
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昔のことですから、言葉は統一されていませんが、「ひむし」と濁って読ませているのは、かなり画期的と思います。
珍しい書を手にしていると少々の感動を味わいました。

でも、明治中期に国定教科書ができ、言葉が統一されてしまい、「ひむがし」という言い回しは絶滅していきました。

もう一つ、「うみ」と、「つ」が付いています。
これもちょっと気になりました。
ちょっと気になった時に、サッと調べられると嬉しい気分になります。
とりあえず、ジャパンナレッジで調べてみたら、出ていました。
「所有・所属などの意を表す」「の」と分かりました。
「うみの」という意味になります。

東海道を「ひむがしの うみつ みち」と読むのは、「東の海の道」という意味です。
それが、この本では「東の海つ道」となっています。
「の」がダブらない分、どことなく品があるように感じます。

教師をしていた頃、野口芳宏先生が主催する木更津技法研という勉強会に参加したことがありました。
野口先生の論文が提案されたときのことです。
同じ意味合いの言葉が、違う言葉で書かれていたのを見て、私は「同じ意味なら同じ言葉を繰り返し使った方がよいのでは・・・」と尋ねました。
すると、野口先生は「それは美しくない」というような印象のことを話してくれました。

それを思い出し、「東の海つ道」という言い回しに、味わい深いものを感じました。

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