【横山験也のちょっと一休み】№.2250

■算数の話(4)カッコの心得■
今回も『基本算術書』という戦前の中学受験準備の本からの話題です。

カッコについて、次のように記されています。
括弧には大、中、小の外に直線を用いてい括弧の代わりにすることもある

として、例題が示されています。
イの方は、大括弧、中括弧、小括弧で、これらについては学生時代にならいました。

ロは珍しいです。
小括弧の中にアッパーバーが用いられ、そこが括弧同様の意味に用いられます。

若いころ、当時、筑波大付属小に勤めていた坪田耕三先生からカッコの話を聞いたことがあります。
カッコは漢字で書くと「括弧」となります。
「括(くく)る」と、円の円周の一部である「弧(こ)」。
つまり、「弧で括る」という意味なのです。

すると、アッパーバーは、線で括っているので、「括線」となります。
そこから、坪田先生は分数の横線も「括線」と呼んでいいのではないかと話してくれました。

以来、私も分数のバーのことを日本語で言うときには、時々、「括線」と用いています。

これらは、名称の話です。
不思議でならないのは、このアッパーバーはどのように使っていたか、という運用です。
戦前の教科書には小括弧は出てきますが、このアッパーバーはほとんど出てきません。
にもかかわらず、こういう記号を紹介している本があります。

この運用については、なかなかわからなかったのですが、アフリカへ行き、ハタと気が付くことができました。

ルワンダの小学校では1年生は鉛筆を使うことがあるのですが、2年生ぐらいになると、ボールペンを使っています。
ボールペンで紙に書くと、もう、消せません。
(12-2×5+88)÷45=
と書いてしまってから、後からその中に小括弧を入れたいと思ったら、すでに書いてある小括弧を中括弧に変更しないとなりません。
ボールペンではそれができません。
そこで、アッパーバーで代用となります。

こう考えると、かなり高いレベルで合点がいきます。

私は、コンピュータでプログラミングをしています。
そこでは、計算式中に大括弧、中括弧は用いません。
((12-2×5)+88)÷45=
と、すべて小括弧で表します。

これは、自分で勝手にそうしているのではなく、そういうルールになっているのです。
プログラム言語の表現上の諸般の事情があるからです。

そう考えると、括弧も、「小→中→大」の順を守り、それ以外は認めないという風にかたくなには考えない方が賢明ということがわかってきます。

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