2023年05月08日(月)20:23:32

「約分」の「約」の意味

【横山験也のちょっと一休み】№.3498

算数の古い本を開きました。
『覚え易い 算術の講義』(根津千治著、荻原星文館、昭和10年発行)です。そこに、キロメートルを「粁」、ヘクトメートルを「粨」、デカメートルを「籵」と漢字で表すことが載っていました。
これは、算数の本にはよく載っているので、珍しいことはありません。教科書にも載っていると思います。

私はこの単位の漢字を初めて見た時、日本人の有能さを少々誇らしく思いました。これなら、パッと見てわかるからです。

ところが、ある日、日本人はちょっとイマイチだったように思えてきました。

もともとの「km」「hm」「dam」などのk、h、daは数を表す接頭語なので、接頭語の部分だけを漢字に直すと「千m」「百m」「十m」となります。ですので、4000mや500m、80mは、4千m、5百m、8十mと表されていることになります。読んだ通りの表記になっています。
ヨーロッパの子ども達はこういう感じで単位を見ているかと思うと、単位一つをとってもナイスな作りこみと感じます。

このナイスな単位を、明治時代の学者はなぜm千、m百、m十と、読み順が逆になる表し方の漢字にしたのか、はなはだ疑問です。もしかして、単位を漢字一文字で表す時、部首は左側が普通だろうと、文化の師匠である中国の漢字の習いに敬意を払ったのではないかと思います。また、当時あった洋算(西洋の算数)軽視の風潮の表れのようにも思えてきます。

西洋表記より、若干の後退を感じる「粁」「粨」「籵」ですが、その遅れにより、また、改めて算数の歴史を楽しむことができました。

さて、肝心の約分の「約」の意味です。次のように記されています。
「約」トイフ字ハ「割ル」トイフ意デ,約数トハ「割ル数」トイフコトデアル。
高いレベルで、納得しました。

こちらは、私の書いた算数の本です。面白い本です。

 

算数,
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