【横山験也のちょっと一休み】№.3427

『日本語源大辞典』を開いたら、「こんぺいとう」が載っていました。
あの甘くておいしいお菓子の名前です。
漢字で「金平糖」「金米糖」と書くのですが、もともとポルトガル語のconfeitoで、それが訛ってコンペイトウとなったそうです。

訛ると書いてあるのですが、どこで訛ったのかは書いてありません。
ポルトガルで訛ったのか。日本で訛ったのか。どちらも可能性がありますが、どうにもわかりません。
わからないことは残念なことですが、わからない時には、ありがたいことに想像する楽しみがついてきます。どんなドラマがあったのだろうかとほんの少しですが思いを巡らすことができます。

(ポルトガルで訛った場合)
ポルトガルの都市部ではconfeitoと言っているのですが、田舎へ行くとその地方の言い回しでconfeitoとは言いづらく、conpeitoとみんな言っていました。その田舎の青年が志願して日本行きの船に乗ることになり、出立前に母親が「いざという時にこれを食べるのよ」と託してくれた袋に入ったconfeitoを、大切にザックに入れ…。そうして、日本人に訛った言葉で「コンペイトウ」と言いながら1つぶ2つぶとあげたのかもしれません。

辞書には「参考」欄があり、そこには1569年にルイス・フロイスというポルトガルの宣教師が織田信長に贈ったのが始まりとされています。
そうすると、田舎の青年がザックに入れて持って行ったというほど庶民的なものではなく、当時のポルトガルでも非常に高級なお菓子だったのだと思えます。

辞書には日本でも長い間高級菓子だったことが載っています。
江戸時代は大名の茶菓子であり、明治時代には一般家庭の来客用のお菓子で、贈答品としても使われていました。
そこから察するに、信長の時代は「御金平糖様」と前後に敬称をつけても不思議ではないほどの高級品だったのだと思います。

私が学生の頃だったでしょうか。人生を語る先輩から「コンペイトウ」の話を聞かされたことがあります。
「お前らは、今は若いから、あちこちで突っ張ってとんがっているけど、人間、最後は丸くなるんだよ。
ただね。大きく丸くなるか、小さいままで丸くなるかは、人生の歩み方できまってくるんだ。
コンペイトウがあるだろ。あのとげとげのあるお菓子だよ。
小さく丸くなる奴は、そのとげをみんな折ってしまって丸くなるんだ。まっ、小物ということだ。
でもな。大物になるやつは違う。とげととげの間を埋めて大きな真ん丸になるんだ。
お前らがどっちになるかは、心がけ次第だ」
少々突っ張って生きていたので、先輩の言葉がかなり沁みました。

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