【横山験也のちょっと一休み】№.2690

■ 瀧澤馬琴の桃太郎 ■

調べ物の続きです。
前回のは「これは面白い! 瀧澤馬琴の『燕石雑志』」でした。

『燕石雑志』の中に、桃太郎の話が出ています。
全体のストーリーは同じなのですが、細かい所で微妙に違っています。
特に、面白いと思ったのは、宝物と退治についてです。

まずは、宝物から。
はっきりはしないのですが、私は宝物を金銀財宝と思っていました。
ところが、『燕石雑志』には、次のように書いてあります。

鬼どもその敵しがたきを見て、三ツの宝物隠れの蓑、隠れ傘、打ち出の小槌を献(たてまつ)りて、主の命乞せり。

隠れ蓑というのは着ると姿が消える蓑で、隠れ傘も同類の物と思われます。
なりたいときに透明人間になれる便利な蓑傘ということです。
これに、打ち出の小槌も付いています。

これが宝物なのですから、桃太郎の話ができたころは、金や銀などより、隠れ蓑や打ち出の小槌の方がお宝としてポピュラーだったのだろうと思えてきます。

次に退治に関することです。

鬼ヶ島の鬼達は、宝を差し出すことにより、鬼の主の命乞いをしました。
その結果がその先に続いています。

かくて桃太郎、その宝を受けて鬼王を放(ゆる)し、

最後は許してあげたのです。

ちょうど今、『三国志』を読み進めています。
三国志では、捕らえた敵の大将には、次の2つのどちらかの対応をしていました。

1、降参、降伏
2、打ち首

不思議だったのは、降参や降伏をした敵の大将は打ち首にならないのです。
それどころか、即座にそれなりの役職を与えられます。
そういうことが何度も出てきて、次第に、降参とか降伏という言葉の意味が、伝わってきました。

降りて、敵側に参じる。
降りて、敵側に服する。

心を入れ替えて、相手側の人間として参じ、与えられた任務に服するということなのです。

桃太郎の鬼王は1にも2にも該当せず、放免となったのですが、これは、きっと与えられる服務が桃太郎側に無かったからなのだろうと思います。

ところで、明治時代にできた桃太郎の歌では、鬼を退治しに行きます。
こちらは、その単漢字からは退けて治める意味合いが出てきます。
さてさて、どういう思いで退治となったのでしょう。
あれこれ、思いが巡りました。

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