【横山験也のちょっと一休み】№.3422

集中力の科学』の中ほどに、心理学者のスキナーの日常が書かれていました。
「毎朝、新聞と数ページだけ辞書を読む。」

新聞を毎日読む人はたくさんいますが、辞書を毎日読む人はほとんどいないと思います。
特に、最近は電子辞書になったので、パラっとめくって読むということができません。意図的に文字を入れ込まないと内容が出てこないからです。

辞書は好きなので、時折でもパラっとめくって読めるように、手の届くところに数冊おいてあります。野口先生の御自宅にあった『類語の辞典』も置いてあります。
辞書はどれも面白いのですが、結構刺激が強いのは語源辞典です。面白くて、その昔、一冊丸ごと最初から最後まで読んだこともあるほどです。
読んだと言っても、読んだ先から忘れていくので蓄積にはなりません。

小学館の『日本語源大辞典』も手の届くところにあるので、朝のニュース読みの後にパラっと開いて数項目を読んでみました。

いきなり、なるほどと思ったのは「さんした」という言葉でした。漢字で書くと「三下」です。

やくざ映画などで、ちょっとした喧嘩になったときに「さんした野郎が」などと相手をののしることがあります。その「さんした」です。

辞書を読むと、三はサイコロの目で、「三から下は絶対に勝てない」というルールの遊び(ばくちと思う)があり、そこから目の出そうにない人のことを三下と呼ぶようになったそうです。
ただの罵り語ではなく、「お前は出世しない!」「万年ヒラ!」というような意味合いの言葉なので、言われて図星だった人もいると思うと、ちょっとコメディタッチになってしまいます。

「三から下は絶対に勝てない」というルールのサイコロ遊び、たぶん博打だったのだろうと思いますが、そういう賭博があったようだということに、不思議さを感じます。
なにしろ、その博打は「三下」という言葉を生み出したのですから、世間にかなり知れ渡っていることになります。でも、丁半博打のようには今日には伝わっていません。ある一時期大流行して、「三下」という言葉を生み出した後、政府の命令で禁止され急速に廃れたのかもしれません。あるいは、三下よりもっと刺激的なさいころ賭博が広がったのかもしれません。

三下は、算数の用語では3以下となります。「以上、以下、未満」をまとめて学ぶのですが、三下の意味を知ってしまうと、余談として子ども達に話してしまいそうです。
「昔ね。やくざという人たちがいてね。ほっぺたなんかに、刃物で切られた傷があってね。・・・」
楽しくなりそうですが、こんな話はしない方が良いですね。

この本には「三下」は出てきませんが、楽しい本です。


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