【横山験也のちょっと一休み】№.2773

漢字の訓読みのクイズを一つ。
左の漢字は、何と読むのでしょうか。

平仮名で13文字もあるので、控えめなヒントも付いています。
この漢字は大修館書店が出している日本最大の漢和辞典、『大漢和辞典』に載っています。
それを調べればわかることですが、大漢和辞典が手元に有る先生はいないと思いますので、正解を記します。

「ほねとかわとがはなれるおと」です。
漢字交じりで書くと、
「骨と皮とが離れる音」です。

骨と皮が離れるのですから、あまり気色の良い漢字とは思えません。
自然と疑問が湧いてきました。
・なんで、こんな漢字ができたのか。
・骨や皮なのに、なぜ石がでてくるのか。

ふと浮かんできた疑問でしたが、もしかしたら、漢字の用例を見ることで解決に近づけるのではないかと思い、調べてみました。
見ると、『荘子』の「養生主」でこの漢字使われていると分かりました。

新釈漢文大系の『荘子』をさっそく開いてみると、運よく納得のいく話が載っています。

腕利きの包丁人の丁(てい)さんに、王様(文恵君)が牛の解体を頼みました。
王様は、この丁さんの腕前の噂を聞いていたのでしょう。
解体の様子をずっと見ていました。

丁さんが包丁で肉に触れるとパリパリといい音がします。
丁さんが包丁を進めていくとバサバサと、これまたいい音がします。

心地よいリズムに乗って舞うような気持ちになった王様は「ああ、よいなぁ」と言いました。

話はここから佳境に入ります。包丁人としての修行の話になります。
普通の包丁人と、名人との精神性の違いが見事に記されています。
関心のある方は、『荘子』を読まれてみてください。

この話を読み、再び漢字を見たら分かってきました。

縦棒が肉のついた骨。
それを石の上に立て、斜め上から包丁をパサ、パサ、パサと入れている様子です。

あるいは、パサパサっと包丁を入れて肉が離れ骨だけになった様子かもしれません。

いずれにせよ、御馳走の準備をする職人が腕を振るっている姿からできた漢字に見えて来ました。
働く人に敬意を持ち、心から応援している漢字。
そんな風にも思え、私には中身の濃い漢字となりました。

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