【横山験也のちょっと一休み】№.2787

長い訓読みをする漢字を1つ御紹介します。

さて、この漢字、訓読みでどう読むのでしょうか?

平仮名で14文字もあります。
ゆるいヒントとして、虫食い状態での訓読みを記しました。
さらに、平仮名のみでの表記ですので、1年生の教科書で使われている分かち書きも加味しました。

平仮名と漢字をじっと見て、訓読みがスッキリわかる方は相当な強者です。

学研漢和大辞典には、訓読みとして「ところ」と載っていますが、上のような長い訓読みは載っていません。

正解は、大漢和辞典の5巻に載っています。

「みずの ゆったりと ながれるさま」です。
漢字交じりにすると、
「水のゆったりと流れる様」となります。

なるほどと思うのですが、しっくりきません。
漢字を見ても、そこに水っぽさが無いからです。

用例には「攸、行水也」とありますが、どうして「水が行く」となるのか分かりません。

そこで、漢字の成り立ちを見てみたら、つながりが見えて来ました。

漢字の左側が、もともとは水の流れや川を表していたのです。

漢字の右側はぼくづくり(のぶん)で、部首になっています。
ぼくづくりには
「うつ」「むちうつ」という意味があります。

ですので、打つ方が主で、水の流れは従となります。

中国の河はよく氾濫を起こします。
地域住民の生活を守るためには、護岸工事が必要です。

土を盛って打ち付けて、
さらに盛って打ち付けて、
もっと盛って打ち付けて、
堤防をつくります。

盛った土をたたいて打ち付けている人々がいて、
その隣を川の水がゆったりと流れています。

そんな光景が浮かんできます。

川の近くには田畑を耕す村人たち。
その生活を助けようと堤防づくり。
川は落ち着き、水はゆったりと流れていきます。

この漢字の「ゆったり」という読みに、村人のホッとしている姿が見えて来ます。
地域の安心安全のための公共工事がこの漢字になったと思うと、人類愛のような奥深いものを感じます。
私にとって心を温かくしてくれる漢字になりました。

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